「調査書」は高校在学時の学力や生活態度、人間性を判断する重要な参考資料です。しかし、調査書に書かれている内容がわからなければ、大学受験に本当に重要な書類かどうかが理解できません。そこで今回は、大学受験に必要不可欠な『調査書』について解説します。
記事内では調査書に記載される項目を具体的に紹介するため、これから調査書を申請する受験生にも理解できる内容です。本記事を参考に調査書の理解を深めながら、大学受験の準備を進めましょう。
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「調査書」は、受験生の高校生活を総合的に評価した資料です。卒業した高校、または在学中の高校から発行され、受験生の成績、特別な活動の記録、出席状況などが詳細に記載されています。大学受験の際、すべての出願先に調査書を提出しなければならず、調査書の内容は受験生の評価に大きな影響を与えます。
調査書は一見すると、単なるフォーマットに見えるかもしれません。しかし、各項目は受験生の特徴を表す重要なものばかりです。ここでは、調査書には何が記載されるのか、それぞれの項目がどのように受験生を評価するのかを解説します。
調査書の上段部分には、基本情報が記載されています。住所・氏名・性別・学校名・入学した年、卒業見込みなどです。これらの情報は、受験生の基本的なプロフィールを証明するために重要な個人情報です。
受験生が高校在学中にどのような学習を行い、どの程度の成果をあげたのかを示す重要な項目です。この欄には、高校1年〜3年の1学期までの全教科と、科目ごとの5段階評価と取得単位数が記載されます。具体的には数学の成績が「4」、英語の成績が「5」、歴史の成績が「3」といった記載方法です。
各科目における平均と、全体的な平均が記載される部分です。全体の平均は「評定平均」といい、受験生の全科目の成績を足して、科目数で割った数字です。例をあげて説明すると、対象者の5科目の成績がそれぞれ『5・4・4・3・4』だった場合、成績の合計数は20です。
そして、合計数を科目数(この場合は5)で割ると4.0となり、この4.0が評定平均として受験生の全体的な学力を表します。
一方、科目ごとの平均成績も重要な評価項目です。受験生が高校1〜3年生の1学期までに取得した科目の全成績を平均化したものです。このように、各教科の学習成績の状況は、対象者の学力と学習姿勢を評価するうえで重要な項目といえます。
対象者が各教科でどの程度の学力を発揮したか、その結果をA〜Eの5段階評価に落とし込んで表示します。5段階評価の区分は、以下のとおりです。
上記5段階評価は、大学が受験生の学力を一目で理解できる指標です。この項目では、同じ成績に位置する学生が全体でどの程度存在するかも記載されます。たとえば、受験生がB評価を得た場合、同様にB評価を得た学生が50人いた場合は50人と記載されます。
「総合的な探求の時間」は、生徒の自立性と柔軟性に焦点を当てた新しい評価基準です。高校教育の一部として2022年度から導入され、生徒が自ら課題を設定し、研究したうえで結果を発表することが目的です。この新たな取り組みの背景には、ビジネスのグローバル化と予測不能な時代の到来といった現況があります。
こうした目まぐるしく変化する時代を生き抜くため、総合的な探求の時間は、生徒の自主性と成長の機会を与える重要な取り組みといえるでしょう。
受験生がどれだけ学校の行事に参加したかを示す項目です。例をあげると、学校の生徒会長を務めた場合、リーダーシップとほかの生徒と協働して活動を運営できる協調性を示せます。また、文化祭の実行委員会に参加したケースではプロジェクトを計画する能力、すなわち「計画性」があることを証明できます。
このように、特別活動の記録は受験生の主体性や協調性、そしてリーダーシップを評価するための重要な項目です。
高校での成績以外に受験生を評価する重要な項目を記載します。具体的には以下6つの項目があります。
これらの項目は、高校在学中にどのような活動を行い、どのような経験を積んだかを具体的に示します。受験生がそれぞれの学年で経験した内容を記載することで、成長過程の理解につながります。
先述した1〜7の項目以外に大学側に伝える価値のある情報や、特別な成果や達成状況を記載します。たとえば、芸術面にすぐれた対象者が有名な芸術コンクールで大賞を受賞した場合、その詳細を記述します。このように、生徒が取り組んだ活動や達成した成果を詳しく記載することで、大学側に好印象を持たれる可能性は高くなるでしょう。
学年ごとの出席日数と、欠席日数を記載する欄です。対象者が、学校生活にどれだけ真剣に取り組んでいるかのひとつの指標といえます。とくに、学校長の推薦が必要な指定校推薦では、欠席日数が多いと評価が下がる可能性があります。
学校内の選考で勝ち残るには優れた学業成績だけでなく、出席日数の確保も必要不可欠です。また、公募推薦でも大学側が「欠席日数」を厳しく評価している場合、欠席日数が多いと出願すらできないケースもあります。
さらに、欠席日数だけでなく「遅刻」にも気をつけなければいけません。一部の高校では、遅刻の回数によって欠席と見なされる場合もあります。遅刻は時間管理が不足していると捉えられてしまうため、欠席日数同様に注意すべきポイントです。
大学受験では、「調査書」の提出が義務づけられています。試験だけでは測れない人間性や高校生活での活動歴、学習態度などが確認できるからです。それでは、実際に調査書の内容により大学受験の合否は決まるのでしょうか。ここでは、一般入試と推薦入試で調査書がどのような影響を与えるかを解説します。
一般入試では基本的に試験結果で合否が決まるため、調査書が受験の合否に影響することは、ほとんどありません。イレギュラーとして、試験で獲得した点数が合格ライン上にいる場合や複数の受験生が同じ点数を獲得したときは、調査書の評価を参考にするかもしれません。
なお、調査書で合否を判断する場合は調査書の中身を数値化(評価点)して考慮します。この評価点は、一般的に「内申点」と呼ばれます。ただし、内申点を合否の判断材料とする際は、大学がその事実を募集要項に記載する必要があります。
募集要項に「調査書の内容も合否の判断材料とする」といった記述がなければ、調査書(内申点)は、とくに気にする必要はありません。
推薦入試では一般入試と違い、調査書の内容が合否に大きく影響します。受験生の学業成績だけでなく、人間性や高校生活での活動歴、学習態度などを重要視しているためです。ちなみに、調査書をどの程度評価に反映するかは大学ごとで異なります。
したがって、推薦入試で合格を目指す受験生は志望校の募集要項を確認し、大学が調査書をどの程度重視しているのかのリサーチが重要です。
受験する大学数に応じて、調査書も必要です。つまり、受験する大学が3校であれば3枚の調査書を準備しなければなりません。なお、予期せぬ事態に備えて2〜3枚余分に調査書を用意しておくとよいでしょう。たとえば、郵送時のトラブルで大学に調査書が届いていない場合や、追加で受験を決定した場合など、もしものときに備えておくと安心です。
調査書は基本的に、「発行日から3か月以内に作成されたもの」が使用されます。そのため、12月が調査書の申請には最適な時期です。ただし、12月は調査書を依頼する受験生が増加し、発行までに時間がかかるため、少し早めに申請しておくとよいかもしれません。
調査書が発行されると、自分で高校まで取りに行くか、郵送で受けとるかを選べます。受け取り方はこちらで自由に選べますが、手数料がかかる可能性があるため、余計な出費を避けたい人は事前に手数料の有無を確認しておきましょう。
2025年度の大学入試から、調査書の様式が変更されます。変更する主な理由は、調査書を作成する教員の負荷軽減です。具体的な変更内容は以下のとおりです。
ホームルーム活動、生徒会活動、学校行事が分類され、学校側が設定した基準を満たしている場合、学年ごとに「◯」と記載されます。
現行様式にある6つの分類が削除され、要点を学年ごとに箇条書きする形に変更されます。
様式変更による影響は少ないといわれていますが、記載事項が省略化されるため、担任教師の記載内容が評価の重要なポイントになることは間違いありません。
本記事では、大学受験に必要な「調査書」について解説しました。調査書は試験結果だけでは理解できない受験生の経験や人間性、個性を示す重要なツールです。また、一般入試と推薦入試では調査書の重要性は異なりますが、大学入試にチャレンジするうえで重要視すべき書類には違いありません。
なお、2025年度から調査書の様式が変更されるため、これから受験を控えている人は今回の記事を参考に、どの部分が変更されたのかも確認しておきましょう。