大学受験の面接試験は、受験生の人間性やコミュニケーション能力を評価する重要な機会です。面接試験時の質問にどのように答えるか、面接時のマナーは守れているか、そして自分の考えや意志を面接官に伝えるかが重要です。しかし、事前に面接の対策をしなければ、相手からの質問に的外れな返答をしたり、そもそも面接時のマナーに反したりするかもしれません。
そこで今回は、大学受験の面接試験について解説します。記事のなかでは、面接試験の種類から面接時に聞かれる内容まで詳細に説明しています。また、面接時のマナーにも触れているため、初めて面接を受ける受験生にもわかりやすい内容です。ぜひ、最後までご覧ください。
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大学受験における面接試験は、筆記試験だけでは評価しきれない受験生の多面的な部分を評価する場所です。受験生の人間性はもちろん、大学での過ごし方、将来の方向性をどのように考えているかなどの熱意が重視されます。そして、面接方法は「個人面接」から複数人で行う「グループディスカッション」までさまざまです。
また、面接官からの質問は定型的なものだけでなく多岐にわたります。たとえば、自己PRや将来の夢、学校生活についての質問などがあるため、制限時間内で自己表現するには、事前準備と面接対策が欠かせません。
面接対策は自己紹介の練習や質問への適切な返答、さらには面接時のマナーなどが含まれるため、受験日までに面接時の対策を万全にしておきましょう。
大学受験で面接試験を導入している大学は、どのような目的で面接をするのでしょうか。ここでは、面接試験の具体的な理由を紹介します。
大学の面接試験では、面接官が受験生に「なぜこの大学を選んだのか」といった質問から受験生の志望動機や学習への意欲を確認します。面接官の質問の意図は、受験生が大学を選んだ背景を理解し、将来の進路や学習への意欲にどのように影響しているかを評価するためです。
志望動機の明確化は、大学生活での学びや学習意欲を確認するうえで重要な要素です。具体的な志望動機がある受験生は、目標に向かって真剣に学習に取り組むと予想され、大学側も入学させたい人材として魅力的に映ります。
また、大学の公式サイトやパンフレットで得た情報も大切ですが、オープンキャンパスでの体験や選んだ学部や学科に対する熱意も重要な指標といえます。面接官は長年の面接経験から、受験生の真剣さや熱意を見抜くプロフェッショナルです。したがって、面接試験では表面的なテクニックより、自分自身の情熱や思考を素直に伝えることを意識しましょう。
面接試験では志望動機や学力だけでなく、人間性も重視されます。人間性とは、価値観や行動心理、そして周囲の人たちとどのように関わるかなどを含む広範な概念です。こうした人間性の良し悪しは、入学後の学生生活を円滑に進められるか、大学のブランドイメージを高められるかなど、多方面において重要な要素です。
とくに面接で注目されるのが、面接時の服装やマナー、そして言葉づかいではないでしょうか。これらは受験生の人間性を具体的に示すものであり、面接官が受験生の思考や行動の基礎を評価する重要な手がかりです。
たとえば、場に相応しい服装選びは、社会的なルールを理解していることの表れです。また、礼儀正しいマナーは、他人への敬意やコミュニケーション能力を示し、適切な言葉づかいは表現力をアピールする武器となり得ます。したがって、面接試験に挑むときは人間性や面接時のマナーへの理解が、面接を成功させる重要なポイントといえます。
面接試験は、受験生が基本的な学力とすぐれた能力を持っているかを判断する重要な機会です。すぐれた能力といえば、「コミュニケーション力」がわかりやすいのではないでしょうか。コミュニケーション力は、「聞く」「話す」「伝える」の3つの要素から成り立っています。
コミュニケーションのスキルが乏しいと、ほかの学生とトラブルが生じたり、そもそも大学生活がうまく送れなかったりと多くの問題が起きる可能性があります。したがって、受験生は面接の前に、コミュニケーションスキルを意識し、改善しておくことが重要です。
大学受験における面接は、いくつかの種類があるのをご存じでしょうか。大学によって面接の種類が異なるため、それぞれの特徴を理解しておく必要があります。ここでは、面接でよく使用される3つの形式を紹介します。
個人面接や個人面談は、面接試験のなかでスタンダードな形式です。受験生ひとりに対して、面接官が複数人(通常は2〜3人)で対面します。面接時間は20〜60分程度に設定されており、時間内で受験生のさまざまな側面を評価します。ほかの面接形式に比べ、質問に対して深く掘りするのが個人面接の大きな特徴です。
また、一部の大学では、集団面接やグループディスカッション後に個人面談を実施するケースもあります。以上の点から、個人面接は受験生の特徴や能力をもっとも理解できる面接スタイルといえるでしょう。
集団面接は、個人面接とは異なり、複数の受験生(通常2〜6人)が同時に面接する形式です。面接官は、面接者全員の質問に対する回答や立ち居振る舞いなどを確認し、個人ごとの特性を見極めます。なお、集団面接では、ほかの受験生と同じ答えになってもパニックに陥る必要はありません。
大切なのは、自分自身の言葉で思考や感じたことを面接官に伝えることです。また、集団面接は複数人で行われるため、個人面接より回答時間や質問数は少ないかもしれません。それゆえ、制限時間を効率的に活用し、自分の意見をシンプルかつ明確に伝える能力が求められます。
プレゼンテーションやグループディスカッションは、企業で開催される研修でも頻繁に使用される形式で、大学の面接試験でも積極的に採用しています。5〜10人程度の受験生がひとつのグループを形成し、面接官から与えられた特定のテーマについて議論します。
グループディスカションの特徴は、受験生が自分の意見を述べるだけでなく、ほかの受験生の意見を理解し、それに対する反応も示す必要がある点です。これにより、受験生の自己表現だけでなく、他人の意見を受け入れる協調性やグループ内でのコミュニケーション能力も評価されます。
そのため、面接試験までに自分の意見を明確に伝える具体的な例を考え、また他人の意見を理解し反応する能力を鍛えることが重要です。
大学受験の面接で受験生が聞かれる質問は、どのようなものがあるのでしょうか。事前に質問事項を理解しておけば、面接時にも冷静に受け答えができるでしょう。ここでは、面接試験でよくある質問を6つ紹介します。
面接試験で必ず質問される項目が「志望動機」です。面接官が志望動機を質問する際は、以下の内容が多いです。
【質問例】
志望理由は入学後に学びたいことと、大学を志望した理由といった2つの観点から伝えられるように準備しておくとよいでしょう。大学で学びたいことを語る際は、漠然とした内容よりも近年問題視されている環境問題やIT技術、AIなど、具体的な社会問題と紐づけて話をすると、面接官も理解しやすいです。
また、面接までに押さえておくべきことは以下のとおりです。
1.大学で学びたいことに関する理解の深掘り(例:社会課題や動向への調査)
2.入学後に学びたい講義や研究室
3.大学・学部・学科がアピールしている「強み」や「特徴」で、興味や関心がある事柄
4.志望校の環境やサポート体制で魅力に感じたこと
「大学への志望理由」は、志望校について情報収集した上記内容から、自分自身が魅力を感じた部分を複数書き出しておき、面接時に話せるようにしておきましょう。
【質問例】
大学入学後の目標や抱負、そして、目標達成に向けどの程度具体的な計画をしているかを面接官は評価します。この際、受動的な姿勢よりも自分から主体的に考え、行動を起こす姿勢をアピールすることが重要です。
しかし、面接時点で明確な目標を持っていない受験生もいるかもしれません。そのような場合は、適当に目標を作るのではなく、大学入学後に「何を学びたいのか」または「何にチャレンジしたいのか」など、自分自身の素直な思いを伝えることが大切です。
【質問例】
面接試験で求められる「自己PR」の内容は、学業や大学生活で活かせる強みや個性を指します。面接は制限時間内で自己主張する必要があるため、アピールポイントを事前に整理しておかなければ、うまく面接官に伝わらずに期待した結果が得られないかもしれません。
なお、面接官より自己紹介を求められた場合、趣味趣向といった話題を数多く伝えるよりも、長所やアピールしたいエピソードを厳選して伝えましょう。短所については、ただ伝えるだけでなく、改善するためにおこなっている努力や工夫の内容も説明するとよいでしょう。短所への改善意思を伝えることで、自分自身の向上心を面接官に証明できます。
【質問例】
高校時代の具体的なエピソードや経験をとおして、受験生の主体性や協調性、リーダーシップなどを確認します。たとえば、文化祭やスポーツ大会に積極的に参加した経験があるならば、協調性を持って集団行動ができる人物と評価できるでしょう。また、部活動での経験は目標に向かって、どれだけ真剣に取り組めるかを示すよい判断材料といえます。
【質問例】
学校推薦型選抜では、第一志望にしているかどうかが重視されます。 また、併願校を質問された場合、大学名だけを伝えるだけに留め、志望順位までは伝える必要はありません。
【質問例】
医者や教師、エンジニアといった専門性の高い目標を持つ人は、目標を持つ理由や免許・資格の取得に向けた意欲や熱量を伝えましょう。また、研究者やより専門性の高い技術者を志す人は、大学院への進学などの選択肢もあります。
一方、具体的な職業や目標が定まらない人も、将来関わりたい分野など大まかな方向性があれば、将来興味のある事柄として面接時に伝えるとよいでしょう。
大学の面接試験では、人間性も重用視されると先述しました。とくに、面接時の服装やマナーはチェックされるため、事前に対策しておくべきでしょう。ここでは、面接試験で押さえておくべきマナーを解説します。
面接試験は、待合室からスタートしているといっても過言ではありません。面接会場には大学関係者も多くいるため、場に相応しくない会話をしたり、ほかの受験生との不適切な対話をしたりするのは避けるべきでしょう。また、スマートフォンの操作もNG行動です。スマートフォンの使用は、協調性がないと印象づけられてしまう恐れがあるためです。
なお、入室前の姿勢も面接官に評価されています。足を組む、腕を組む、肘をつくなどは、悪い印象を与えるため注意しましょう。
面接の順番が回ってきたら、まずは一礼をし「失礼します」と断りを入れてから面接室に入ります。このとき、ドアは片手ではなく両手を使ってゆっくりと開閉します。ドアノブを強く握りながら音を立てると乱暴な印象に見えるため、丁寧さと気配りを心がけましょう。
指定の席の横に移動し、45度の角度でゆっくりとお辞儀をしてから、受験番号、学校名、名前を元気よく発声します。面接官から「どうぞお座りください」と声をかけられるため、「失礼します」と断りを入れてから着席します。このとき、自分勝手に着座するのはマナー違反に該当するので、面接官からの指示を待ちましょう。
なお、座る姿勢も基本的には背筋を伸ばし、浅めの位置で座ります。男性は足を肩幅程度に開き、女性は膝を合わせて座り、両手は軽く握って膝のうえに置きます。面接官は第一印象を重要視するため、発声は元気よく大きな声を心がけてください。
面接官の質問には、オドオドせずに自信を持って返答しましょう。自信にあふれた返答は、自分自身のアピールとともに、自分の意見を相手に伝えるには重要な要素です。面接官に対する言葉づかいは、「あのー」や「えーっと」などの無意味な「つなぎ言葉」を使わないようにしましょう。
つなぎ言葉は、弱さの表れやためらいの象徴とされ、面接官に悪い印象を与える可能性があります。普段の会話でこうした言葉を使っている場合は、面接前に改善するように努めましょう。最後に、面接中に携帯電話が鳴ると面接が中断されるだけでなく、マナーを守れないといった評価をつけられるかもしれません。
面接試験では非常にマイナスな評価につながるため、控え室に入る前に必ず携帯電話の電源を切りましょう。
面接試験は面接時の受け答えだけでなく、退室までが試験です。そのため、退室時のマナーも理解しておく必要があります。まず、面接官から「以上で面接は終了です」と伝えられたら、椅子から立ち上がり「本日はありがとうございました」と感謝の言葉を伝えます。
そして、出口に向かってゆっくりと歩きます。このとき、急な動きを避け、落ち着いた動きで行動すると好印象に映ります。そして、ドアの前に到達したら再度面接官に目線を合わせて一礼し「失礼します」と挨拶してから退出してください。面接が終了しても最後まで礼儀正しく行動することで、社会性の高さをアピールできます。
なお、面接終了後の控え室も面接官から評価されている可能性があります。面接後の開放感と安堵感から「終わったー」などと大声を出したり、ネクタイやシャツのボタンを外したりなど、横柄な態度をとらないように注意しましょう。
面接官は受験生の言葉だけでなく、動きや姿勢もチェックします。大股で歩く、ポケットに手を入れたまま歩くなどの行動は、受験生に求める謙虚な姿勢とはかけ離れています。また、着席後の貧乏ゆすりや、手を意味なく動かすなどの行動も、注意力散漫といったイメージを面接官に与えるため注意してください。
したがって、面接試験では姿勢や立ち居振る舞いにも配慮が必要です。
面接中の表情や目線は、受験生のコミュニケーション能力を示す重要な要素です。表情が硬い、または目線が泳いでいると、自分に自信がないと誤解されるかもしれません。また、面接官が複数人いる場合は、特定の人にだけ視線を向けるのではなく、バランスよく視線を配ることを意識しましょう。
全体的に、表情と目線のマナーは、自己表現とコミュニケーション能力を評価する重要な指標といえます。自分自身を正しく伝えるには、これらの要素に注意を払い、自然でありながらも自信に満ちた表情と目線が求められます。
大学の面接試験では、身だしなみや服装も重要な評価対象です。なぜなら、着用する衣服によって面接時のマナーや面接の場に適した衣服を選んでいるかが判断できるためです。例をあげると、制服がある高校であれば、制服を着用して面接試験に臨むのが一般的です。
一方、制服がない高校では、スーツがもっともスタンダードな服装です。色合いは落ち着いた黒が無難で、派手なアクセサリーやメイクは避けるとよいでしょう。無理に整髪料を使って髪型を変える必要はありませんが、清潔感がある髪型を心掛けてください。
本記事では、大学受験の面接試験について解説しました。現在の大学受験で採用されている面接形式は個人面接、集団面接、そしてプレゼンテーションやグループディスカッションが主流です。それぞれの形式には独自の特徴が存在するため、これらも特徴を理解しておくことで、より効果的な面接試験の準備が可能です。
また、実際の面接では志望動機や入学後の抱負など、受験生が自分自身を表現する機会が設けられます。そのため、今回の記事ではよくある質問例と回答ポイントにも触れ、これから面接試験にチャレンジする受験生にもわかりやすい内容にしています。
最後に、大学受験の面接試験は受験生の知識や能力を評価するだけでなく、人間性や社会性を判断する場でもあります。したがって、今回の記事を参考に自分自身の魅力を高め、自信を持って面接試験にチャレンジしましょう。